今なぜ男性不妊診療が求められているのか
この度、4月から賀来宗明理事長、藤原敏博院長のご高配のもとでフェニックスアートクリニックにて男性不妊部門を担当致します岩本晃明です。
本日はご挨拶のコラムとさせて頂き、今後、不妊カップル特に男性側の関与がどのような妊活のために必要か情報をお届けしてまいります。
INDEX
「不妊」を取り巻く時代背景
時代の背景として、女性一人当たりの平均出産数を示す合計特殊出生率が1.29(平成16年)(ちなみに人口維持するには2.07が必要)となり人口減少に大きく影響を示しています。このような状況におかれている我が国において不妊症の治療は重要な課題の一つと言っても過言ではありません。平成18年政府は少子化社会対策大綱を策定し重点課題の中に「不妊治療への支援に取り組む」という項目を盛り込みました。そこには「不妊を取り巻く要因など不妊に関する研究の取り組みを進める」という記載がありますが不妊症を扱う生殖医療の現状を見ると、その原因究明よりむしろ対症療法的な生殖医療補助技術(ART)の発展を目指す方向に向かっていることが危惧されるかと思います。我々男性不妊門医としては自然妊娠を望むカップルの要望に応えるべく基礎から臨床へ繋がる研究を行っていく事が少子化対策の重要な一策であると思っています。
不妊カップルの約50%は男性側の原因
日常診療で感じることは、一般論としてカップルの多くのご主人は「俺には問題ない」と思っている方が多くおられます。不妊の原因は、明らかな男性因子が24%、女性因子が41%,男性・女性ともに原因がある割合は24%であるとのWHOの調査結果が出ています。すなわち不妊カップルの約50%は男性側にも原因があるということになるのです。
しかしながら不妊診療の中心はまだまだ女性が中心で産婦人科医により行われているのが現状です。子宮内精子注入法(IUI)、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)等の生殖補助技術(assisted reproductive technology : ART)の進歩により,ややもすると男性因子について原因精査が十分に行なわれないままARTの治療が先行されている懸念があります。その原因の一端は男性不妊を専門とする生殖医療専門医が全国で72名(2021年度までに)しかいない現実にもあると思われます。しかも専門医がいる施設は多くが大都市に存在していることも一因です。
夫婦で妊活~男性の覚悟と行動で決まる~
もし精液検査にて精子数の減少や精子運動率が低下している場合、あるいは数回の精液検査が正常であってもARTでの妊娠・出産が得られない場合には男性不妊の精査を早急にしなければなりません。男性不妊専門医の有志で『NPO法人男性不妊ドクターズ』を設立しました。小生が初代の理事長を務めました。
妊活に入ったらどうぞ夫婦一緒に来院されることをお勧めいたします。
男性諸君、積極的に愛するパートナーのために夫婦一緒に精査をすることによって不妊カップルの挙児希望に早期に応えられるだけでなくパートナーの身体的・精神的ストレスを軽減し、高騰している生殖医療費軽減にもつながるものと思っています。繰り返します。夫婦で妊活~男性の覚悟と行動で決まる~。このNPO法人は不妊カップルの皆様への啓発活動を行ってまいります。
男性不妊原因の変化
近年の男性不妊の原因で大きく変わったのは性機能障害の頻度です。1996年の性機能障害の率は3.3%でした。しかし18年後の2014年の調査結果では何と13.5%と上昇してきたことなのです。性機能障害には射精障害と勃起不全とがあります。自然妊娠を期待されている夫婦では奥様が排卵日をご主人の出勤時に伝えているのですが、男性は夫婦生活を決められた時に行うことが結構プレッシャーになっているのです。その場合、時に勃起不全に陥ったりして性行為自体出来ないことがあるのです。一旦は挿入出来ても射精しなければ児が出来ないと焦ってしまう腟内射精が困難となってしまうのです。このようなタイプが多いことが性機能障害の頻度が増加するのです。しかしながら外来を受診した時には全く問題なく精液検査を行えるのです。つまり心因性の勃起不全、射精障害と言えます。現代病と言えるでしょう。解決策は人工授精にて妊活することです。第1子が授かるとプレッシャーが無くなり第2子は自然妊娠で可能になります。
精子機能の質を検査
最近のトピックスとして不妊に結びつく精子の質が問われています。精液検査が正常にもかかわらず妊娠に至らない、人工授精を頻回に行ってもうまくいかない。その後はステップアップして採卵後体外受精、顕微授精を行ってみても妊娠に至らない場合には精子機能に問題があります。通常の精液検査行った後残った精液を使用して次のDFIとORPの検査を行います。
DNA 断片化指数検査(DFI:DNA fragmentation Index )通常の精液検査
精子が DNA の損傷を受けている割合(断片化率)が高いかどうかを見る検査です。 精子が酸化ストレスなどのダメージを受けると、精子の DNA が損傷することがあります。DFI 検査によって、あなたの隠れた不妊の原因を特定できる可能性があります。 DFI 検査によって不妊治療の方針が立てられます。
ORP(Oxidation Reduction Potential)検査;精液中酸化還元電位測定検査
精液中の酸化還元電位(酸化ストレス度)を測定する検査です。酸化ストレスは、精子DNA損傷の主な原因とされています。不妊症の男性は、精液中の活性酸素濃度が高く、抗酸化物質の濃度が低い可能性があります。精液中の酸化ストレスが高い場合は、酸化ストレスを下げるように生活習慣の改善や、抗酸化作用があるサプリメントの摂取などが有効です。
当院でも近々にこの検査が行えるよう体制を整えてまいります。
本日はご挨拶程度に留めます。今後随時男性不妊外来の詳細をお伝えして御夫婦の妊活の診断治療、サポートをしてまいります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
令和4年3月吉日
フェニックス アート クリニック
男性不妊担当医 岩本 晃明
–不妊治療セミナー情報のご案内-
フェニックス アート クリニックでは、毎月定期的に妊活・不妊治療・体外受精に関するセミナーをオンラインにて開催しています。体のこと、検査のことなど様々な内容のテーマを設けております。
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