当院の不妊治療について

慢性子宮内膜炎(CE)検査

慢性子宮内膜炎とは、細菌感染などにより子宮内膜に炎症が持続的に起こった状態のことをいいます。慢性子宮内膜炎の方のほとんどは、自覚症状がなく、自然治癒が難しい事が分かっており、ここ最近の研究で慢性子宮内膜炎は着床不全の一因ではないか?と注目されています。当院では、3回移植をし、4個以上の胚を戻した方で、結果が出ない方は、胚だけの要因ではないのではないかと考え、慢性子宮内膜炎の検査をおすすめしています。検査項目は、以下の2つになります。


  1. ①内膜組織検査 行う時期:排卵後数日以内

    子宮内膜組織の検査は、内膜組織を採取してきて、CD138免疫染色することで判定します。当院では、掻把(キュレット)ではなく、患者さまの痛みを減らす目的で、吸引法を用いています。


  2. ②子宮鏡 行う時期:生理終了~排卵まで

    発赤、微小ポリープ、浮腫などがないかを子宮鏡にて観察します。


【費用】 30,000円


(慢性子宮内膜炎と判断された場合は、抗生物質を2週間服用して頂きます)


ご注意:検査後、数日少量の出血が持続する場合があります。

子宮内膜着床期遺伝子発現検査(ERA)

子宮内膜が胚を受け入れる(着床可能な)期間は、一般的に生理19~21日目頃であるといわれており、この期間は「着床の窓(インプランテーション・ウィンドウ)」と呼ばれています。この胚と子宮内膜両方のタイミングが合わなければ、着床出来ないといわれていますが、この着床の窓には個人差がみられ、稀に時期が一般的な期間よりずれることもあり、ERAでは、こうした個々人の着床ウィンドウの時期を特定することにより、着床の確率をあげられるのではないかという仮説に基づいています。


【費用】 初回 150,000円 2回目以降 120,000円


ご注意:検査後、数日少量の出血が持続する場合があります。

ピエゾイクシー法(Piezo ICSI)

Piezo ICSI

顕微授精(ICSI:intracytoplasmic sperm injection)の方法としては、2種類が知られています。1つが、現在最も一般的に行われている方法のc-ICSI、もう1 つが最近行う施設が多くなってきたpiezo-ICSI という方法です。当院ではどちらも行うことが可能です。どちらの方法でも、成熟卵子に対して、人の手によって不動化処理をした精子を、針を用いて細胞質内に注入します。

この2つの方法の違いは主に①透明帯の破り方、②細胞膜の破膜の仕方の2 点です。

Piezo-ICSI はもともとヒトよりもデリケートなマウスの卵子に対して行うために開発された方法で、透明帯という卵でいう殻の部分にピエゾとよばれる圧電素子をかけることによって貫通させます。この方法では、物理的に尖った針の先端で透明帯を破るc-ICSI と異なり、通過させる時に卵を変形させることがないため、卵子に対するストレスが少なく、c-ICSI と比べて受精率が高くなるともいわれています。

また、②の細胞膜の破り方でも、c-ICSI では破膜できたかの確認を、細胞質を吸引して行います。この吸引した細胞質を再度細胞質内に戻す際に、針の中に入っている培養液も一緒に細胞質内に入ってしまう可能性があります。こうした2 つの点から年齢が高い方や卵子の質が良くない方、1、2 個しか卵子が採れなかった方にpiezo-ICSI は効果的であると考えられます。


【費用】 2個以下 160,000円/3〜5個以下 170,000円/6〜9個以下 190,000円/10個以上 220,000円

(※個数=採卵数 ※精子調整代も含みます)

初回スプリット(Split)培養

初回スプリット培養とは、1度の採卵でとれた卵子を2つのグループに分け(Split)、顕微授精と体外受精(ふりかけ法)を併用する方法です。他院でも採卵を行ったことがない、初回の方が対象となります。体外受精は、精子の所見が良くとも、媒精してみるまでどれ位受精するのか予測をつけることは困難な場合も多くみられます。この方法のメリットとして、体外受精のみを行った際の受精障害を回避し、体外受精よりも受精率の高い顕微授精を「保険」のような形で行うことにより、受精する胚を多く獲得することが可能な場合があります。精子所見がよくない場合はこの方法ができない場合もあります。


【費用】 2個以下 190,000円/3〜5個以下 200,000円/6〜9個以下 220,000円/10個以上 250,000円

(※個数=採卵数 ※精子調整代も含みます)

アシステッド・ハッチング(AH)

アシステッド・ハッチングとは、胚が子宮内膜に着床し、妊娠に至るには、透明帯(カラ)からの孵化(ハッチング)が必要となります。加齢や凍結融解の過程において、透明帯が硬くなることによって、胚が透明帯から脱出できないハッチング障害を起こし、着床に至らないことがあります。孵化促進法(AH)とは、硬くなった透明帯の一部を人工的に切開してハッチングさせやすくする技術です。適応となる方は、凍結融解胚、反復不成功の方、40歳以上の方などとなります。

アシステッド・ハッチング(AH)

現在主に2種類の方法が用いられており、機械的切開は、物理的に透明帯の部分に針を刺し、胚を押さえている反対側のピペットのヘリに透明帯を押し付けることで、確実に透明帯の切開が可能です。レーザーによる切開は、半導体レーザー(赤外線を使用しており、DNA 障害が少ないとされています)を用いて透明帯にピンポイントに照射するため、胚に影響はないといわれています。リスクとしては、ハッチングした際に内部細胞塊(胎児になる部分)が2つに分かれてしまい、双子になる確率がわずかに上がるといった論文もあります。


【費用】 20,000円

エンブリオグルー(Embryo Glue)

エンブリオグルーはヒアルロン酸を多く含んだ胚移植用の培養液です。ヒアルロン酸は子宮内腔にも存在する物質で、その高い粘性から着床率を上げるのではないか、また、ヒアルロン酸が胚を外的ストレスから保護するのではないか、といわれいます。エンブリオグルーはFDAから認可を受けており、人体に悪影響がない事が証明されています。

当院での移植の際は、全例このエンブリオグルーを使用しています。


【費用】 胚移植代100,000円の中に含まれています

2個胚移植法(DET)

2個胚移植法では、1度(1周期)に2個の胚を同時に子宮内に戻す方法です。

当院では日本産科婦人科学会の方針に則り、多胎妊娠にならない為に、SET(単一胚移植法:1周期に1個の胚を戻す方法)を原則としています。日本産科婦人科学会の方針では、35際以上の方や反復不成功の方が対象となりますが、2個の胚を戻すため両方着床する可能性もあり、多胎になる可能性が通常のSET(単一胚移植法)の時よりも高くなるため、当院ではその条件に加え、医師の判断により行います。


【費用】 100,000円 + アシステッド・ハッチングした胚の個数×20,000円

SEET法

胚は培養液中に様々な物質を放出しています。特に、胚盤胞まで到達した胚に関しては、子宮内膜に対して着床を促すような物質が放出されているのではないかという仮説から、このSEET法は提案されました。

方法としては、採卵し胚盤胞まで到達した胚を培養していた培養液を保存しておきます。移植周期の胚盤胞移植日2、3日前に凍結した培養液のみを融解し、子宮内へ注入します。子宮内に先に注入した培養液中の物質が子宮内膜を刺激し、胚を戻すまでに着床しやすい環境を作り出してくれるのではないかという効果を期待して行います。

メリットとしては、2段階胚移植法(2step)のように2つの胚を戻すわけではないため、多胎のリスクはSET(単一胚移植)と同等です。ただ、来院日が1日増えることによる負担が加わります。


【費用】 (1本あたり)凍結 10,000円 融解 20,000円 処置料 25,000円 延長10,000円/年

カルシウムイオノフォア(Caイオノフォア)

顕微授精を行っても、受精率が著しく低い「完全受精障害」に対して、行われる処理です。

完全受精障害の1つの原因として、卵活性化(Caオシレーション)がうまくいかないことがあります。完全受精障害がある症例に対して、カルシウム濃度を上げた培養液に卵子を浸すことで、人為的に卵活性化を起こします。ただし、受精障害の原因は不明な場合が多く、この方法はあくまで卵活性化に問題がある場合のみ効果を発揮するため、この処理を行ったからと言って全ての方に有効というわけではありません。


【費用】 20,000円

卵子凍結保存

卵子凍結は、がん患者などに対して妊孕性温存のために行われる医学的適応と、加齢による卵子の老化を懸念して行われる社会的適応の2 種類に分類されます。当院では、現時点で結婚はしていないが、将来の妊娠に備え、未受精卵の状態で保存しておく社会的適応の卵子凍結を行っております。

卵子凍結保存

医学的適応については、日本産科婦人科学会、日本生殖医学会、アメリカ生殖医学会すべてにおいて推奨するとされています。対して、社会的適応については、日本産科婦人科学会、アメリカ生殖医学会ともに推奨しておらず、日本生殖医学会においては、40 歳以上では推奨しないという条件を設けています。社会的適応の卵子凍結が推奨されない理由としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 1、通常の体外受精に比べ、凍結卵子を使用した場合の妊娠率の低さ
  2. 2、不妊ではない、健康な女性に対しての採卵時の身体的負担
  3. 3、融解胚移植後の高齢出産のリスク
卵子凍結保存

ある論文(Chang et al. Fertil Steril 2013改変)では、30 歳~ 36 歳の出産率が8%、37 歳~ 39 歳では3%となっており、通常の体外受精の出産率において、前者が約20%、後者が約10%であることを鑑みても、非常に低く、現段階で効率の良い方法ではないことがわかります。また、社会的適応で卵子凍結を行った後、その人たちが卵子を使わずに、そのままというケースも多いため、統計をとる際の分母自体非常に少ない点も、論文によって必要な個数や出産率のバラツキが大きく、しっかりとした数字を出しにくい原因の一つになっています。

現段階で社会的卵子凍結を行っている病院はそれほど多くはなく、また、社会的卵子凍結を行いたいと思う方たちが想像するほどの結果を担保できていないのが卵子凍結の現状です。

また、費用に関しても通常の体外受精よりも高くなるため、当院で卵子凍結を行う際は、卵巣刺激や凍結個数などにより調節を行い、できる限り無理のない範囲でのご希望に添えるような形での卵子凍結を行っております。


【費用】 1個目 100,000円 2個目から1個50,000円 (延長:1個 50,000円/年)

※当院は料金を内税とさせていただいております。