妊活中のコロナワクチンについて
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妊活中女性や妊婦さんに対してのワクチン接種による安全性
こんにちは。
フェニックス アート クリニック 生殖医療医長の金谷です。
「コロナワクチンを打ってもいいですか?」というご質問を多く頂くようになりました。まだ妊活中女性や妊婦さんに対しての新型コロナウイルスのワクチン接種による中長期的な安全性は十分な知見が揃っているとは言いがたい状況で、世界各国でやや見解が分かれているのが現状です。
令和3年1月27日には、日本産婦人科感染症学会と日本産科婦人科学会から「COVID-19 ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する方へ」という合同提言が出されました。1) この時点では妊娠中のワクチン接種に関する安全性が全く確立していなかったので、「妊娠を希望される女性は、可能であれば妊娠する前に接種を受けるようにする(生ワクチンではないので、接種後⻑期の避妊は必要ない。)」とあります。しかし世界中からワクチン接種者のデータが蓄積されてきて、状況は変化してきました。
世界中からのデータ蓄積による状況の変化
令和3年1月ごろまでは日本の学会はヨーロッパ諸国やWHOと同じく、妊娠中のワクチンに慎重な姿勢を打ち出していましたが、3月1日に発表された米国疾病予防管理センター(CDC)からのデータ2)では、妊娠中にワクチン接種した約3万人の有害事象について安全性に問題は見られず、流産も自然発生率の範囲内でした。3月23日に公開されたアメリカの論文3)でも、妊娠中および授乳中の女性がワクチンを接種して得られる抗体価は、妊娠していない女性と比べて同等であったと報告しています。臍帯血中や母乳中にも抗体が確認されたため、胎児や新生児にも、胎盤や母乳を介して免疫が伝達されるということも期待されているようです。徐々にワクチン接種が広まり知見が蓄積していく中で、ワクチンに対する考え方は変わってきていて、厚生労働省のHPでもワクチンの安全性に関する情報が日々更新されています。4)
日本国内の状況について
今の国内の状況としては、医療従事者や高齢者への接種が進められていて、本日(2021/4/12)までに国内でファイザー社製のワクチン約170万回が接種実績として報告されています。ニュースでは6月末までには順次国民に行き渡る程度のワクチンが届くと聞いていますが、これを読んでくださっている方にはまだワクチンを打てる予定が立っていない人も多いのではないでしょうか。妊娠中のコロナ感染による重症化リスクはさほど高くないこともわかってきましたが、それでももし妊娠中にかかってしまった時の不安を考えると、妊活女性はワクチン接種を積極的に考えてみてもよいのではと思っています。
妊活女性がワクチンを接種するタイミング
では妊活女性に順番がまわってきたら、どういうタイミングで打てばいいのかと言うと、健康診断のレントゲン撮影と同じように、器官形成期(妊娠4週から12週)を避ければ安心だと思います。月経開始後〜排卵前の妊娠の可能性がない期間や、採卵(+全胚凍結)周期であれば、妊娠は確認できていませんのでワクチン接種に問題はありません。一方で、排卵後・人工授精後や胚移植後には、着床して胎児が子宮内で成長している可能性がありますので、妊娠12週までは接種を控えることが望ましいと思います。
みなさま一人一人感染リスクや接種によいタイミングは違いますので、まずは担当医とよく相談してみてくださいね。
**お知らせ**
フェニックス アート クリニックでは、不妊治療を始める前の参考になれば・・・と、患者様目線の「ART疑似体験ムービー」を作成しました。ご興味のある方は、ぜひご覧ください(※本ムービーは実際の院内を細かに撮影しているため限定公開とさせていただいております)。
1) http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210127_COVID19.pdf
2) COVID-19 vaccine safety update, Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) March 1, 2021
3) Gray KJ et al. COVID-19 vaccine response in pregnant and lactating women: a cohort study, American Journal of Obstetrics and Gynecology (2021), doi: https:// doi.org/10.1016/j.ajog.2021.03.023.
4) https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0027.html