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繰り返す〝流産〟を防ぐために ~着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)という選択肢~

流産の原因の多くは胎児の染色体異常

流産は、医学的には妊娠22週未満で妊娠が継続できなくなってしまうことを言います。日本産科婦人科学会のARTオンライン登録データによると、体外受精による流産率は総妊娠当たり約26.5%で、妊娠12週未満の比較的初期の段階で起こる流産の主な原因は「胎児の染色体異常」と言われています。染色体とはなにというと、簡単に言えば遺伝子の集合体で、生物を構成するための『設計図』のようなものです。我々、ヒトの場合では、母親由来の23本と父親由来の23本の計46本の染色体をもっています。1番から22番までの各1対の計44本は常染色体と呼ばれ、この常染色体とは別に、性別を決定する1対2本の性染色体があります。
通常であれば、母親から1本、父親から1本ずつ対でもらうため、それぞれの染色体は2本ずつ対になります。しかしながら、どこかの染色体が1本だったり(モノソミー)、3本だったり(トリソミー)すると、胎児が正常に発育することが出来ず、多くの場合が着床しない、あるいは妊娠まで辿り継いでも流産や死産を引き起こしています。

 

受精卵の染色体を検査する新技術

流産を防ぐために近年行われているようになってきたのが、着床前胚染色体異数性検査(PGT-A: Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidy)です。
PGT-Aは、体外受精治療によって得られた受精卵が持つ染色体数を、胚移植を実施する前に調べる検査で、流産を防ぐことを目的として、欧米諸国を中心にすでに多くの国で実施されています。
一方、日本においては「命の選別につながる」という観点から数年前までは認められていませんでしたが、日本国内でもPGT-Aのニーズが高まり、2015年から特別臨床研究として開始され、2019年から実施可能施設が大幅に拡大されました。さらに、2022年9月より一般診療として行えるようになりました。

 

検査の対象となるのは

日本産科婦人科学会は、PGT-Aを受ける対象として、以下のようないくつかの条件を提示しています。
①胎嚢が確認された臨床的流産が2回以上ある(習慣性流産症例)
②過去に臨床的妊娠の既往がなく、体外受精治療により良好胚を移植するも3回以上着床が認められない(反復着床不全)
この条件に当てはまる方がPGT-Aを受けることが出来ます。

当院でも患者様の声を受け、2022年よりPGT-Aを開始しました。流産を繰り返してしまう患者様の負担を少しでも減らせるように努めてまいりますので、まずは当院にご相談ください。

監修:フェニックス アート クリニック院長 藤原敏博
書いた人:胚培養室統括室長 川口優太郎