AMH検査
血液中のAMH濃度を測定するAMH検査
AMHは抗ミュラー管ホルモン(anti-Müllerian hormone)の略称で、卵巣にある発育過程の卵胞から分泌されるホルモンです。
女性には左右ひとつずつ、計二つの卵巣があります。生まれる前の胎児期の卵巣には、卵子のもとになる原始卵胞が存在し、誕生時→思春期→生殖期→閉経期と次第に数が減っていきます。AMHは、卵巣に卵子がいま、どの程度残っているかを推測する指標として用いることができ、血液検査で月経周期によらず、いつでも測定できます。
AMH濃度数値と妊娠率の関係
AMHが低下する要因には、加齢・喫煙・肥満・子宮内膜症・卵巣への手術歴などがあります。低下しているということは、残っている卵子が少なくなってきていることが推測され、卵巣機能が低下してきていることもあります。残念ながら、AMHを上げる方法はありません。一方でAMHが高すぎる場合には、排卵障害などをおこしていることがあります。
一般的に、AMHは年齢が上がるほど下がりますが、下がり方は個人差が大きく、年齢が比較的若くてもAMHが低い方もいます。
ここで、アメリカ生殖医学会雑誌(Fertility and Sterility)に最近紹介されたAMHに関する論文を一部抜粋してご紹介します。
〈論文〉
著者: Scott Mら
タイトル:Anti-Müllerian hormone levels are associated with time to pregnancy in a prospective cohort study of 3,150 women
DOI: https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2024.06.024
3か月以上妊活していない、3150人のアメリカ人女性(年齢中央値:31.5歳、AMH中央値:2.71 ng/ml)を対象に、AMHと妊娠までの期間の関係を調べた、前向き研究です。
観察期間中に1325人(42.1%)が妊娠しています。より若く、AMHが高い方が妊娠しています。妊娠までの期間を検討すると、低AMH群では30歳以上の、どの年齢層においても、妊娠率が低いことがわかりました。また、年齢が上がるほど、妊娠率がさがることもわかりました。
かなり大規模な前向き研究であり、年齢に関係なく、AMHが低い方が妊娠率が低いことが示されました。
AMHは妊娠率や卵子の質を示す値ではない、といままで信じられてきましたが、この論文からは妊娠率との関連が疑われます。今後さらなるデータの蓄積や解析がすすめられるものと思われます。
ご自身のAMHが低い方は、より積極的に不妊治療について検討されることをおすすめします。
AMH値は将来妊娠を希望する女性にとって、タイムラインを考えるとても有用なツールであると考えられます。まずは、ご自身のAMHを調べて、ご自身の卵巣がどのような状態なのか、調べてみてはいかがでしょうか。いつでも検査することができます。お気軽にご相談ください。
フェニックス アート クリニック
生殖医療医長 宮下 真理子