卵子凍結

egg freezing

卵子凍結とは

about

卵子凍結とは、将来の妊娠や体外受精に備えて、若いうちに質の良い卵子を採取し、凍結保存する方法です。この保存により、若い時の生殖能力を維持したまま、長期にわたって卵子を保存することが可能となります。

卵子のもととなる「卵原細胞」は、女性が生まれる前、お母さんのお腹の中にいる時から卵巣に存在し、出生後、女性の年齢とともに老化していきます。卵子は加齢の影響を受けやすく、妊娠において重要な要素である卵子の質が妊娠能力に大きく影響します。卵子凍結は、年齢を重ねても女性が出産できる可能性を高める一つの手段といえます。

卵子凍結のメリット

  1. 01

    将来的な妊娠の可能性を上げられる

    20代で卵子凍結をした場合、その卵子を使用した体外受精は20代で妊娠を試みた場合とより近い確率での妊娠が期待できます。したがって、少しでも若い年齢の卵子を凍結保存することで、妊娠しやすい状態を維持でき、卵子の老化を防ぐことが可能です。

  2. 02

    精神的な安心感が得られる

    卵子凍結により妊娠の選択肢が広がることで、仕事やパートナー探しに焦らずに取り組める安心材料となります。

  3. 03

    病気への備えができる

    年齢とともに子宮や卵巣の病気のリスクが高まりますが、卵子を凍結保存することで、万が一の場合でも妊娠に備えることができます。

卵子凍結のリスク・副作用

卵巣刺激、採卵時の副作用は以下のようなものが考えられますが、いずれも低確率です。

排卵誘発剤による副作用

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼ばれる副作用があり、腹痛や腹部の膨満感が主な症状です。当院では副作用の防止を念頭におきながら刺激を行うため、卵巣の腫れや出血といった症状はほとんど見られません。しかし、排卵誘発剤の効果には個人差があり、まれに卵巣が腫れる方もいます。その場合は、数日間の自宅安静が必要です。OHSS発症頻度は日本生殖医学会の見解ではARTによる卵巣刺激で6.6%〜8.4%、入院を要するほどの重度の症例は0.8〜1.5%。つまり、約5%の症例で発生します。

採卵による副作用

下腹部の痛みや出血が起こることがあります。採卵は基本的に安全ですが、経腟超音波ガイド下で卵巣を穿刺するため、極めてまれに腸や血管などの臓器損傷のリスクがあります。また、卵巣表面からの出血や卵巣内での感染が発生する可能性があり、その確率は約0.3%です。このような場合、数日間の安静入院が必要となることがあります。

母体高齢化による周産期リスク

若い卵子を用いると妊娠の確率は上がりますが、妊娠時の母体の年齢が高くなると周産期のリスクが上昇することには変わりありません。
当院では、3年以内に使用していただくことを目途に、価格設定をしております。

卵子凍結が近年増加している理由

年齢を重ねると卵子の質は低下します。

女性は一生分の卵子を卵巣内に持った状態で生まれ、その後新たに増えることはありません。つまり、卵子は年齢とともに老化します。一般的に、女性の妊娠能力は35歳から低下し始め、40歳を過ぎるとその低下がより顕著になります。そして、45歳になるとほとんどの女性が妊娠する能力を失うと言われています。しかし、すべての女性が若い時期に出産を望むわけではありません。仕事やキャリア、パートナーの状況、健康問題や家族の事情など、妊娠・出産のタイミングは個々の状況により異なります。

たとえば、2022年の内閣府調査(令和4年版 少子化社会対策白書)によれば、女性の平均初婚年齢は29.7歳で、35年前の1985年の25.5歳と比較すると約4歳上昇しています。この「晩婚化」という社会現象は、女性にとって最も妊娠に適した25~35歳の年齢を考えると、妊娠の難しさを増す要因の一つであることがわかります。

このような社会的背景を受け、卵子凍結を選択する女性が増えていると考えられています。

卵子凍結における妊娠率

probability

卵子凍結を利用した場合の妊娠率も気になる点かと思います。

まず、卵子凍結によって保存された卵子を用いて妊娠・出産するには、体外で卵子と精子を受精させる体外受精が不可欠です。凍結された卵子は融解(とかすこと)が必要ですが、その過程で5~20%の卵子が破損する可能性があります。

さらに、融解後に精子と受精した受精卵(胚)が必ずしも良好胚になるとは限りません。良好胚が子宮に着床して初めて「妊娠」となります。

融解後の卵子生存率

90%

精子を注入した場合
の受精率

65%

未受精卵を融解後、良好な受精卵が得られた場合の卵子10個あたりの妊娠率

  • 30歳以下 … 80%程度

  • 31~34歳 … 75%程度

  • 35~37歳 … 53%程度

  • 38~40歳 … 30%程度

  • 41歳以上 … 20%以下

グラフ:各年齢層毎の妊娠率

これらのデータから、卵子の生存率やその後の着床率を考慮すると、できるだけ若いうちに卵子凍結を行い、10個以上、可能であれば20個以上の未受精卵を凍結保存しておくことが推奨されます。

卵子凍結の流れ

flow

卵巣刺激の開始から採卵までの期間を「採卵周期」と呼びます。
生理が始まったら3日以内にご来院ください。

採卵に向けて

  1. 初診

    スケジュール確認や必要な検査(採血、超音波など)を行います。
    所要時間:90分程度

  2. 卵巣刺激開始

    月経1〜3日目にご来院していただき、ホルモン検査、経腟超音波検査を行います。
    所要時間:60〜90分

  3. モニタリング

    月経8〜12日目に2回程度ご来院いただきモニタリングを実施します。
    その際に、再度ホルモン検査と経腟超音波検査を行います。
    所要時間:60〜90分

  4. 採卵

    月経開始から12〜14日目ごろが採卵のタイミングになることが多いです。

    ※採卵自体は5〜20分程度で終わりますが、その後の安静時間と診察などの時間を踏まえますと、午前中いっぱい程度はご都合を調整していただくようお願いいたします。

採卵当日の流れ

  1. 排卵の有無を確認

    最初に排卵が起こっていないかを確認します。
    排卵している場合(約5%)、採卵が中止となります。

  2. 採卵手術

    排卵の確認後、問題がなければ採卵手術を行います。所要時間は5〜20分です。

  3. 術後の休息と帰宅

    静脈麻酔を使用した場合は、手術後に回復室で約1〜2時間休んでいただきます。帰宅後は自宅で安静に過ごしてください。

卵子凍結の平均個数

採卵できる卵子の数には個人差があり、正確な数を予測するのは難しいですが、当院での平均採卵個数は13.1個で、一般的には8〜20個の卵子を採卵するケースが多いです。ただし、採卵した卵子の中には未成熟卵子や変性卵子も含まれるため、採卵した全ての卵子がそのまま凍結対象になるわけではありません。

もし1度の採卵で希望する数の卵子を得られなかった場合は、2ヶ月程度の間隔を置いて再度採卵を行います。

卵子凍結できる卵子の種類

  1. 成熟卵子

    35歳以下の場合、採取された卵子の90%程度が成熟卵と予想されます。

  2. 未成熟卵子

    採卵した卵子の10~15%程度が未成熟卵子です。採卵後、数時間で成熟卵子になれば凍結保管が可能です。

  3. 変性卵子

    変性卵子は凍結保管はできません。採卵した卵子の5%以下ですが、38歳を越えると徐々にその割合が増えていきます。

当院での卵子凍結の年齢制限と保管期間について

当院では、採卵の年齢制限は原則として満40歳の誕生日までとしていますが、40歳以上の場合でもご相談を承っております。また、未受精卵の保管については、学会の推奨では「満45歳の誕生日まで」とされています。当院では保管期限を満50歳の誕生日までと定めていますが、45歳以上で保管延長を希望される場合は、1年ごとに健康状態を考慮して更新が必要です。

その他のルールとして、凍結卵子をとかして体外受精を行う際の精子提供者は基本的に婚姻関係または事実婚関係にあることが条件です。
しかし、時代の変化に伴い、規制緩和が進む可能性もあります。厚生労働省や日本医師会、日本産科婦人科学会の指針に基づき、最新の条件での使用をお願いいたします。