コラム

胚の評価において、染色体異常はどれくらい判別できるのか 2019.06.26

現在の胚の評価の仕方

不妊治療の分野において、40年程度と短い期間に、色々な胚の評価に関する方法が発表・実用化されました。現在日本では、一番確実である胚のバイオプシー(生検;細胞をとってきて染色体を分析する方法)がいまだに特定の疾患の方しか認められていません。なので、現状日本では主に、見た目での評価(形態学的評価)が使われています。(アメリカなどの国では一般的に胚生検)

 

また、最近では1つの胚のみ移植する単一胚移植(SET)が多胎防止のために、日本では主流となり、受精した卵の中から最も妊娠する確率の高いであろう胚を選ぶ必要性がより高まり、受精卵が複数あった場合は、その胚の中でさらに妊娠しやすいであろう順番に順位付けをしていかなくてはならなくなりました。

 

胚盤胞(5、6日目の評価方法) 例:4AA

 

 

しかし、不妊治療の現場では、しばしば形態学的評価(見た目の綺麗さ)で最もよいグレードの胚(AA)を移植しても妊娠という結果につながらなかったり、あまりよくないグレード(CCなど)と判断した胚が妊娠に結びついたという結果が見られることがあります。

これらの結果に結びつかない原因は、胚発育停止、着床不全、流産は胚の染色体異常によるものが多いと言われています。

また、私自身の見解では、見た目の判断というのは、ラボや、ラボの中でも判断した培養士による判断でグレードが異なる事もあり(特に胚盤胞の評価)、そうしたバラツキも関与しているのではないかと思います。

 

では、私たちが普段使用している見た目の綺麗さで見る胚の評価では、どれくらい染色体の異常を判別できるのでしょうか。

また、年齢が異なる場合、例えば、35歳から得られた4AAと40歳から得られた、同じグレードの4AAは染色体的には、同じであるといえるのでしょうか。

 

今回は、前半部分の普段私たちがしている胚の評価方法がどれくらい染色体異常と相関関係があるのか、というところを書いてみたいと思います。

 

 

胚盤胞の評価と染色体異常の相関性について

まずは、グレード(最初の数字部分、胚の成長スピードを表す)と染色体異常についてですが、

上の図の、青い(Normal Embryos)部分が正常胚で、それ以外は染色体異常の胚となっています。胚の成長速度が速いグレード5,6の胚にくらべ、成長の遅いグレード3以下の胚は染色体異常率が高い傾向にあることがわかります。

グレード5(一部突出胚盤胞)、6(完全突出胚盤胞)で染色体が正常だったのものは、49%となりました。

グレード3(完全胚盤胞)ではトリソミー・モノソミーはほぼ同じくらいですが、その他ではトリソミーが多くみられ、2本以上の染色体に異常があるものは、グレード3以下の胚に多いことがわかります。

※モノソミー:本来ペアである2本の染色体のうち、1本しかない。致死性で殆どが生まれてくることができない。

※トリソミー:染色体が1本多く、3本となる。こちらは生まれてくることができる。ダウン症など

 

 

赤ちゃんになる部分や胎盤になる部分の胚の評価と染色体異常の相関性について

胎児や胎盤になる部分の評価において、染色体異常率とある程度の関連性はありそうですが、ある論文によると、

胎児になる部分がA評価で正常だったもの:62%

胎盤などになる部分がA評価で正常だったもの:46%

 

となり、最高評価である5AA or 6AAでも染色体が正常な胚は52%となり、グレード3以下でも37%の胚において染色体が正常であるといった結果になり、その関連性は強いとは言えません。

 

 

胚の発生スピードが示す意外な事実

この論文は当初見た目と染色体異常に関連性があるという仮説をたて、調べていましたが、結果を調べてみると、意外なモノに強い関連性があることがわかりました。

それが、胚の成長スピードと胎児の性別です。

上の図の濃い方が男の子、薄い方が女の子だった割合になっています。

 

◎グレード5,6と成長スピードの速い胚:男の子 72%/女の子 28%

グレード3以下の成長スピードが遅い胚:男の子 40%/女の子 60%

 

この、胚の成長スピードと胎児の性別には明らかな有意差があり、男の子になる胚は成長スピードが早く、グレード5・6の胚盤胞に到達する時間が約2.6倍速いことがわかりました。

 

これは、面白い研究の副産物かなと思いました。

今回は、こちらの論文を参照してみましたので、ご興味がある方は見てみてください。

 

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