コラム

不妊治療(体外受精・顕微授精)と生まれた赤ちゃんの先天性異常の関係について 2019.07.17


「自然でない、人の手を加える不妊治療は、安全なのか」

 

これは不妊治療を考えた時、誰しもが一度は思い浮かぶ疑問かと思います。

体外受精によって、世界初の赤ちゃんが誕生してから約40年ほど経ちました。たった40年という短い間に体外受精は驚くべきスピードで浸透し、今では日本で生まれる赤ちゃんの17人に1人は体外受精で生まれた赤ちゃんです。

これだけ広く普及した技術ではありますが、この「生殖医療は安全なのか」という疑問に対する答えはいまだにはっきりとした結論がでておらず、今でも議論されるお題の1つでもあります。今後も生まれた赤ちゃんの長期的な発達面なども含めたフォローとフィードバック、研究・調査が必須であるとされています。

 

現在、「アート(体外受精)によって、先天性異常のリスクが高まるとはいえない」というのが通説であり、全体の見解ですが、体外受精により先天性異常が高くなるとする論文も発表されています。

 

今回は、オーストラリアのMichael J. Davis氏らの結果がとても興味深いので、1つの説として、ご紹介したいと思います。

 

<研究背景>

  • 国 : オーストラリア
  • 期間 : 1986年~2002年
  • 対象 : 全出生児 308,974人
  • 体外受精後に出生した児 :  6163人

 

 

この研究は、南オーストラリアの人口160万人の州の全数調査に近い形で行われた大規模調査で、対象人数も多く、信頼できる論文であると考えられます。

 

結果をみてみると、

先天性異常が見られた児の割合は、

 

体外受精児: 8.3%

自然妊娠児: 5.8%

 

と体外受精児でやや多く見られるという結果になりました。不妊治療で生まれた赤ちゃんは、自然妊娠の赤ちゃんに比べて先天性異常は1.43倍であり、母体の背景(母体年齢、出産経験、人種など)を調整すると、1.24となっています。

 

この体外受精の内訳を見てみると、

 

IVF(体外受精、ふりかけ法):1.07倍

ICSI(顕微授精):1.57倍

 

となっており、体外受精(ふりかけ法)では、自然妊娠・分娩した赤ちゃんと先天性リスクに有意差があるとはいえません。対して、顕微授精での先天性異常のリスクは自然妊娠児に比べ、高いことが分かります。

 

これは、自然に近い体外受精(ふりかけ法)でも妊娠できないような、普通であれば自然淘汰されるようなケースであっても、顕微授精という現代の最先端医療を用いる事で、妊娠させられるようになったことも大きく関与していると考えられます。

 

そして、ここからがこの論文の興味深いところなのですが、

 

過去に体外受精で妊娠歴があり、今回は自然妊娠した人:1.25

体外受精歴はないが不妊歴はあり:1.29

 

簡単に言うと、

今回は体外受精をせずに自然妊娠した方の赤ちゃんの先天性異常のリスクは、体外受精の1.07倍よりも高い、1.25倍となりました。さらに、体外受精を行ったことはないが、不妊歴がある人も1.29倍のリスクがあることです。

 

これらの結果から言える事は、

体外受精をする、しないに関わらず、

 

『不妊歴がある事自体が先天性異常のリスクを高める可能性がある』

 

ということです。

 

母体背景(年齢など)を全て排除して計算するのは非常に困難で、残存している可能性もありますが、

「不妊治療で生まれた赤ちゃんは、顕微授精を行った児でも、ほとんどは障害なく生まれてくる」。

これは、事実であると思います。

 

体外受精(ふりかけ法)で生まれた子の先天性異常のリスクは自然妊娠とほとんど変わらず、顕微授精ではリスクの上昇がみられることから、顕微授精の乱用は慎むべきであることがわかります。(ただし、現状、受精障害などがあり顕微授精でしか妊娠できない方も多数いることは確かなので、「無闇な乱用をさける」という言い方が適切ではないかと思います。)

 

そして、体外受精をするかしないに関わらず、『不妊であること自体が先天性異常のリスクを高める可能性がある』というのが、今回の論文のポイントであり、大きな発見かと思います。

 

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