コラム

妊活中の旅行について<前編>
〜不妊治療中に飛行機に乗っても大丈夫?〜 2019.10.24

フェニックス アート クリニック院長の藤原敏博です。

大分、前の記事から間があいてしまいましたが、
今日は妊活中の旅行についてお話したいと思います。

この妊活・不妊治療中に旅行へ行ってもいいか、飛行機に乗っても大丈夫か、という質問は意外とよくお受けします。(特に、誘発時や移植後などに聞かれる(行きたい)方が多いです。これに関しては、注意点について後日まとめたいと思います。)

妊活中の海外旅行へ行くメリットと考え方

 

妊活中は色々な不安やこれをしてはいけない、これをしなくてはならないなど、日常生活に色々と規制がかかり、普段よりストレスを感じる方もいらっしゃるかと思います。

よく妊娠初期や後期に飛行機に乗っても良いかについては調べる方も多いかと思いますが、不妊治療中は飛行機に乗っても被ばくなどは大丈夫なのでしょうか。
また地域によって気を付けた方がいい場所はあるのでしょうか。

一般的に、私たち医療側から旅行などを薦めることはありません。

しかし、一方で過度のストレスは不妊と関連があるといった研究結果もでています。これは、ストレスを強く感じる際にでるホルモンによりホルモンバランスが崩れたり、排卵しにくくするホルモンがストレスにより増加したりするせいだといわれています。

なので、個々の状況にもよりますが、治療期間中に次の生理を待つ間など、お休みの期間を利用し、体調を見ながら旅行を楽しまれるといいのかなと思います。
ちなみに、採卵後の数日間は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こるリスクもあり、この時期は避けた方がいいかと思います。

 

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飛行機と放射線(被ばく)との関係

 

妊娠初期や妊娠中の海外旅行における被ばくについては最近データがそろい始めていますが、不妊治療中の海外旅行などについてはデータが少ないのが現状です。

 

そもそも民間の航空機はおおよそ高度約3万フィート、つまり1万メートル前後を飛行し、地上に比べて大気による保護作用が少なくなることから高度が上がれば上がるほど放射線(宇宙線)の被ばく量も多くなることになります。

 

■一般的に通常の生活における被ばく量

一日:0.001mSv(ミリシーベルト)前後

年間:2.1 mSv前後

 

■日本-ニューヨーク(片道13時間)での往復による被ばく量

0.15mSv前後

 

■医療による被ばく量

胸部レントゲン0.06mSv、胸部CT検査2~13mSv前後

 

といわれており一回の旅行で1日の100倍程度の放射線に一度に被曝することになります。もちろん、アジアやその他近辺国の場合はそれよりも少なくなることが予想されます。

 

 

不妊治療中の被ばくと妊娠初期の被ばくについて

 

では、不妊治療中にこれだけの被ばくをしてもよいのでしょうか?

 

結論から言うと、被ばくが胎児へ影響を及ぼす可能性は極めて低いと考えられています。

また採卵前などの卵子に与える影響は正確には測定できませんが、放射線の影響は受精をした後、週単位で変化していきます。

 

★妊娠初期の被ばくについて★

 

被ばくした際の胎児への影響について

日本産婦人科医会の発表によれば、

★着床前期(受精後の0~8日)

着床期における放射線による流産の閾値は80mSvとされていますが、被ばくをしていなくても流産の多い時期であり、必ずしも被ばくによる流産と断定することはできません。

 

★器官形成期(受精後9日-60日程度)

心臓や中枢神経など臓器が作られる器官形成期(受精後9日-60日程度)における被ばくは80~160mSv以上で内臓奇形や外表奇形を起こすと考えられています。

 

★精神遅滞

精神遅滞は8~15週に最も発生し、閾値は96mSvと考えられてい、ます。80mSv以下ではIQの低下は認められないが、8~15週に800mSvを照射するとIQは30pt下がり、重篤な精神遅滞は40%発生するとされています。

 

不妊治療中であれば心配する期間はこの程度までの時期だと思います。

上の飛行機による被ばく量と胎児に対する影響が出るまでの被ばく量を比べていただければ解るとように、海外旅行は大きな影響を出すほどの被ばくではないと考えられます。

しかし、体外受精だけでなく妊娠全般として長期的な児への影響も完全にはわかっていないことを十分に家族内でも相談の上で旅行をするようにしましょう。

 

さらに後日触れますが、地域によってはワクチン接種が必要なことやジカ熱など妊婦への感染が問題となっている国もあるため、

旅行前には、必ず医療スタッフへ事前にご相談ください。

 

ワクチンなどのご相談や情報はフェニックスメディカルクリニック(本院)でも受けつけておりますので、よろしければご相談くださいませ。

 

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