妊活中の方へ。精子の“質”を見極める検査、登場！ | 婦人科合併症や難治症例に実績多数

妊活中の方へ。精子の“質”を見極める検査、登場！ 2022.08.01

妊活中に役立つ情報

フェニックスアートクリニックで男性不妊外来を担当する岩本です。この度、2022年7月より当院でできるようになりました新しい検査についてご案内します。

この記事の内容

男性の検査について
精子の“質”を見極める検査の登場
DFI、ORP検査でわかること
- ①DFI検査(精子DNA断片化指数検査)
- ②ORP検査(精液中酸化還元電位測定)
異常値が出た場合

男性の検査について

従来は、妊娠をご希望した際に男性側の検査としては精液検査を主に行っておりました。

精液検査では、精液量、精子濃、運動率などを数値化して評価しております。この精液検査の結果がWHOの基準に満たなかった方に関しては、妊活を進めるにあたってステップアップを早めに検討いただく必要があると考えております。

具体的には女性の年齢にもよりますが、運動率に問題がある場合は子宮の中に精子がたどり着けていない可能性があり、その場合は子宮内精子注入法(人工授精)にて子宮の内腔まで精子を運ぶことをお手伝いすることで、妊娠に結び付くことがあります。

人工授精で妊娠に至らない場合は生殖補助医療[assisted reproductive technology :ART]での妊娠をご検討いただきます。ART、いわゆる体外受精を行う場合にはまず、女性の卵巣より「採卵」という処置で卵子を取り出します。そして、体外で受精させるわけなのですが、精子の数や運動率が比較的問題ない場合は通常の体外受精いわゆるふりかけ法を行います。しかし、精子の数や運動率の所見が思わしくない場合は顕微授精を行います。

なかなか妊娠しづらく、赤ちゃんを抱くことが難しかったご夫婦でも、この体外受精の登場で飛躍的にお子様を授かれるようになりました。

しかし、体外受精を何度繰り返しても、なかなか成果が得られない方がいらっしゃいます。具体的には

●受精しない
●良好胚が得られない
●着床しない

などです。

精子の“質”を見極める検査の登場

なかなか妊娠までたどり着けない方の中で、男性側の精子に問題がある方がいらっしゃることが分かってきました。これは最近の医療技術の進歩によって精子の質を見極める検査が登場したことによります。

この検査こそが、DFI、ORP検査です。通常の精液検査を行って、残った精子・精液を用いて検査を行いますので、再度採精の必要はありません。精液検査でいままで問題を指摘されてこなかった方の中にも、これらの検査値に異常を示す方がいらっしゃいます。

DFI、ORP検査でわかること

①DFI検査(精子DNA断片化指数検査)

一般的な精液検査ではわからない、精子の機能や質を調べる検査の1つです。

精子が酸化ストレスなどのダメージを受けることで、精子のDNAが損傷（断片化）することがあります。この検査を行うことで、損傷したDNAをもつ精子の割合（DFI）を調べることができます。DFIが高い場合、受精率や妊娠率が低くなったり、流産率が高くなるといわれています。

生活習慣の改善や抗酸化剤などの服用により、精子のDNA損傷が改善する可能性があるため、今後の治療方針を立てるための指標となります。

出典：株式会社みらい生命研究所

②ORP検査(精液中酸化還元電位測定)

今話題の精液中の酸化ストレスの強さを調べます。酸化ストレスは精子にダメージを与えるといわれています。この検査を行うことで、精液中の酸化ストレスの強さを調べることができます。精液中の酸化ストレス度（ORP）が高くなると、それによってDFIも高くなる可能性があり、受精率や妊娠率が低くなるといわれています。

酸化ストレスが高くなる原因としては、喫煙、アルコール、ストレス、睡眠不足、運動不足、肥満、不適切な食生活などが挙げられます。

出典：株式会社みらい生命研究所