着床不全の原因になる慢性子宮内膜炎と
その最新検査方法
2019.05.28
慢性子宮内膜炎とは
慢性子宮内膜炎とは、細菌感染などにより子宮内膜に炎症が持続的に起こった状態のことをいいます。この病気がやっかいなのは、ほとんどの方は無自覚となり、自然治癒が難しいところです。
慢性子宮内膜炎と不妊の関連性
最近の不妊の最新のトピックとして、慢性子宮内膜炎は着床不全の原因になるのではないか?と注目されています。
東京大学医学部附属病院の廣田先生のグループでも着床外来を行っており、朝日新聞に記事が掲載されていたので、少しご紹介いたします。
■期間:2006年6月~2008年7月
■対象者:128人
■内膜炎(+)だった人:80人(約63%)
■方法:抗菌薬を2週間内服。
90%は完治、その後の状況が把握できている人の約6割が妊娠。
これは同病院の着床外来の患者で、内膜炎の無い女性の妊娠率(約4割)より高かった。
同様の結果は、国内外の他の病院からも報告されている。
被験者は他の不妊クリニックで問題のありかが判定できなかった方が多く、内膜炎に関しては自覚症状が乏しいことから、原因不明の不妊症の多くは内膜炎が原因の可能性があると指摘されています。
慢性子宮内膜炎の検査を受けた方がいい人と検査内容
受けた方がいい人: 3回移植をし、4個以上の胚を戻した方で結果が出ない方
当院では上記の条件を満たす方は、胚だけの要因ではないのではないか、と考え、慢性子宮内膜炎の検査をおすすめしています。
①内膜組織検査 実施時期 → 排卵後数日以内
子宮内膜組織検査は、内膜組織を採取し、免疫染色(CD138)で染色された数によって判断されます。
当院では、患者さまの痛みを減らす目的で、本来用いられる掻把(キュレット)ではなく、吸引法を用いています。
②子宮鏡 実施時期 → 生理終了から排卵まで
発赤、小さなポリープ、浮腫などがないかを子宮鏡にて観察します。
③培養検査 実施時期 → ①の内膜組織検査と一緒に採取します
現在の主流は培養ですが、結果にブレが大きく生じるとのことで、当院では今後は、DNAを調べる方法に変えていく予定です。
慢性子宮内膜炎の治療方針
慢性子宮内膜炎と診断された場合は、抗生物質(ビブラマイシン)を2週間服用
従来慢性子宮内膜炎は、免疫染色など特殊な方法を用いるため研究レベルであり、病理がついているような大学病院でしか行えませんでした。当院も東京大学に委託する予定でしたが、需要の高まりにより、現在は当院でも行えるようになりました。
もし、検査にご興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ当院スタッフまでお気軽にお尋ねください。
慢性子宮内膜炎の検査は、他の卵管造影などの検査に比べ、体への負担も少なく、治療も飲み薬のみと比較的手軽に行えます。何度か移植を行っていて何か他に原因がないか調べたい方は、ぜひ一度検査してみてください。
フェニックス アート クリニックより。
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